仕事ができなくて萎えてる?
仕事でミスして落ち込んでいる?
そんな人に一言だけいいたい。
下には下がいるってことを。
これを見て、自分がまだマシだって思えたら、明日からまた仕事を頑張って欲しい。
なお、全て実話である
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仕事の失敗談③ブラックサーズデー
毎週何かしら起きる問題
“ガム食って5時間立たされたやつ(笑)”
この称号を獲得してから数週間が経った。
僕自身はさすがに大人しく研修生活を送っているものの、なぜか僕の班は立て続けに問題が起こっていた。
個人情報の漏洩は絶対にダメだ!と習った週に、コンビニで免許証のコピーを取った後にそのままコピー機に自分の免許証という最大の個人情報を置き忘れてくるやつがいたり。
僕(研修所の鍵をなくした)といい、免許をコンビニに置き忘れたやつといい、自分の貴重品すら守れないでどうする!と怒られた翌週に寮の鍵が入った財布を丸ごと紛失するやつがいたり。
この資格が無いと証券業務は出来ないから研修中に必ず取るように!という資格試験に2回落ち、今度こそはと思っていた矢先に3回目の不合格通知が来てみんなをドン引きさせるやつがいたり。
監督不行き届きだ!と怒られる指導担当者もたまったものじゃない。
研修が始まって数週間、指導担当者はずっと不機嫌だった。
実は問題が起きるタイミングは…
しかし、ある週の木曜日の朝、指導担当者は珍しくご機嫌だった。
そう、月・火・水と全く問題が起きていなかったのだ。
「よーし、じゃあ今日は、自分探しの旅に出ましょうか♩」
全く意味がわからなかったが、機嫌がいいことだけはわかる。
研修のカリキュラムは一旦脇に置いて、自己紹介のさらに深いもの(生い立ちからの半生を一人一人簡潔に話す、というもの)をやろう、とのことだった。
研修が始まってから立て続けに問題が発生していたので、指導担当者にとっては毎日毎日問題が起こっていた感覚なのだろう。
月・火・水の3日間、問題が起きなかっただけで永遠の平和を享受しているような顔だった。
しかし、僕たちは誰一人笑っていない。
なぜか?
知っているからだ。
免許コンビニ置き忘れ事件が木曜日、寮の鍵ごと財布紛失事件も木曜日、ド集中で取らないといけない資格試験の不合格通知が来たのも木曜日だと言うことに。
ちなみに、一番最初に起きた問題である、ガム噛んで廊下で5時間事件も木曜日だ。
僕らはこの現象を、株価が大暴落した“ブラックマンデー”という事件にならい“ブラックサーズデー”と名付けていた。
個人情報などの危機管理は甘々なのにこういうネーミングセンスだけは無駄に証券会社っぽかった。
指導担当者だけが機嫌をよくしているこの日も、木曜日だった。
もはや必然のように
「では、左端の〇〇さんから、半生を語っていきましょー♩」
僕としては入社半月ぐらいで会社のゴミクズ扱いをされたので、いまいちこのテンションについていけなかったがいつになく平和な空気が流れていた。
念の為補足するが、僕がいた会社の研修期間は「いや…こんぐらい良いでしょ…」ってレベルの些細なことまでめちゃめちゃ大袈裟に怒られる。
3回まで間違えられるパソコンのログインパスワードを1回間違えただけで報告が求められるレベルだった。
たぶんそういう教育方針だったんだろう。
現に昼休みにガムを噛んでいただけで僕は会社のゴミクズに成り果てた。
さて、いよいよこの「自分探しの旅」企画が始まろうとしていた。
左端の〇〇さんが立ち上がったその瞬間だった。
「ピリリリリリ!」
平和な空気を一瞬で切り裂くけたたましい携帯音(ガラケー)が鳴り響いた。
ピーンッ
一瞬で空気が凍りつく。
「も、申し訳ございません!!!」
携帯を鳴らした同期のMが、真っ青な顔をして立ち上がる。
「…ちっ」
もちろん、一瞬にして鬼の形相になる指導担当者。
青冷めて自席で立ちすくむM。
「これはじゅう〜だいなルール違反ですねぇ…」
…。
「怠惰、ですねぇ…?」
…。
たぶん、怒りすぎて一周回りそうになっているのを必死に抑えていたのだろう。
口調は静かだが、今にも爆発しそうな雰囲気だった。
(どうする…?せっかくいい雰囲気だったのに…。いや、でもこのミスは見逃したらいけないだろ、指導者として…?)
みたいな葛藤が心の中であったんだと思う。
いつも通りの
「自習!!」
結果、自習になった。
“てめぇらに教えることなんか何もねぇ!”ってことなんだろう。
問題が起きるといつもそうだったので、みんな慣れた手つきで自習を始めた。
Mも、そっと自席に腰掛けて自習を始めた。
「ピリリリリリ!」
ピーンッ!!
今回の空気の凍りつき方はさすがにやばかった。
このタイミングでまた携帯を鳴らすバカがいるのは誰も想像できなかった。
みんな自習をしているフリをしながらも、誰が鳴らしたんだ?とこっそり探っていた。
「も、も、申し訳ございません!!!!」
Mだった。
もやは意味不明だが、2回目を鳴らしたのもMだった。
Mも、マナーにしたはずなのになんで鳴るんだ??とパニくっていた。
わたわたとしながらカバンから携帯を取りだし、もはや電池をカバーごと本体から引きちぎっていた。
茫然自失となり立ちすくむM。
流れる沈黙。
指導担当者はというと、無表情でパソコンをカタカタしていた。
おそらくだが、怒りが一周してもはや“無”になっている。
Mは、どうしていいのかわからずにずっと立っているが、指導担当者もずっとパソコンをカタカタしている。
普通なら講義をしている時間にパソコンでそんなやる事なんかあるか??ってレベルでカタカタしている。
そのまま10分ぐらいが経つが何も指示が無いままだったので、カバーごと電池を外したガラケーを握りしめながらMは席についた。
反省文
これは後日談なのだが、電話やメールの着信音ではなくアラーム音だったらしい(マナーでも音が鳴る設定にしていた)。
では、なぜ朝の9:30頃という微妙な時間に鳴ったのか?
それは、前日の夜19時半に帰宅し、2時間ほど仮眠してから勉強のために起きようと思ってかけたアラームだったそうだ。
しかし“21:30”としないといけないところを“9:30”と設定してしまい、かつスヌーズもつけていた。
そして、そのアラームがなる前に起きたため、アラームの存在を忘れていたそうだ。
そのために平和な1日とMのガラケーが台無しになったのだ。
しかし、自習中はもちろんそんなこと誰も知る由が無い。
結局その日は終日自習となり、退社時刻30分前からようやく通常通り(とはいえ明日のための事務連絡のみ)の研修になった。
僕たちへの事務連絡をする前に、指導担当者からMに「反省文」のテンプレートが紙で渡された。
「これをコピーして“手書きで”反省文を書きなさい。」
今どき手書きで書く意味など無いが、この指導担当者の嫌がらせにはもはや誰も驚かない。
Mは用紙を受け取り、僕たちが事務連絡を聞いている最中に黙々と反省文を書いていた。
「マナーモードにするのを忘れていました、さーやせん!」以外に書くことなどないのだが、適度な長さにするために「社会人としての自覚」や「会社の一員としての責任感」などのワードを使って無理やりA4用紙が埋まるように書いていく作業だ。
退社時刻が近づき、ようやく気まずい空気から解放されようとしていた。
みんなもようやく表情に生気が戻っている。
そんな時だった。
M「(指導担当者)さん、こ、コピーしろと言われて渡された用紙をコピーせずに原本に反省文を書いてしまいました!」
ピーンッ!
場が凍りつく。
指導担当者「…。」
M「…。」
指導担当者「あんた本当に仕事できないわね…。もういいわ、それで。ちっ」
M「申し訳ございませんでした!!」
もう帰り際だし、怒っても仕方が無いと思ったのか、形相だけは鬼だったがそのやりとりだけで済んだ。
そしてその日の研修が終わった。
帰り支度ができた人から順番に帰っていっている最中だった。
M「(指導担当者)さん、パソコンのログインパスワードを間違えてしまいました!」
ピーンッ!!
凍りつく空気を背に、僕は走って帰った。
教訓
悪いことは時にある種の規則性を持って立て続けに起きるから注意しよう。