仕事の失敗談⑤超VIPな新人だった話

仕事ができなくて萎えてる?

 

仕事でミスして落ち込んでいる?

 

そんな人に一言だけいいたい。

 

下には下がいるってことを。

 

これを見て、自分がまだマシだって思えたら、明日からまた仕事を頑張って欲しい。

 

なお、全て実話である

 

【前後の記事はこちら↓】

仕事の失敗談④机の鍵を4回かけ忘れた話

 

スポンサードサーチ

仕事での失敗談⑤超VIP新人

本部同行

 

「おい〇〇(←僕)、次の水曜日の13時に誰でもいいからアポ入れろ。」

 

「!?」

 

ある日、唐突に指導担当者からのアポ入れの指示が入った。

 

その日は本部の人間が支店に来る日だった。

 

証券会社は株以外にも実に様々な金融商品を取り扱っており、それぞれに専門の部署がある。

 

その日は保険関連の部署の商品説明者が支店に来る予定だ。

 

営業員の誰かがお客様にアポイントを入れ、その人間を同行させ、保険の契約を取りに行かないといけない。

 

まぁ、この「契約を取る」はあくまで建前だ。

 

本部の人間も、営業員も、ましてや支店長も、いくらその商品知識に長けた者が来ても、そう簡単に契約が取れるとは微塵も思っていない

 

しかし、誰もアポイントを入れないとどうなるか…?

 

そう、その本部の人間は遠路はるばる支店まで来て、一日中席に座ってぼーっとしてるわけにもいかないので、なんかパソコンとかカタカタやって“仕事してる風”を装わないといけなくなる。

 

本部の人間にとっても、周りに座る我々にとっても、お互いに変な気を遣わないといけない謎な空間が出来上がってしまうのだ。

 

そのため、支店長ならびに上司からは、この日だけは必ずアポを入れるようにと強い指示が出る。

 

ここで、営業員同士の“アポイントのなすりつけあい”が始まる。

 

無理矢理のアポイント

 

“アポイントのなすりつけあい”と言ったが、正しくは下っ端の営業員へ、より強い営業員からの強制アポ入れ命令が下るだけだ。

 

この日は僕だった。

 

そう、よりにもよって“保険”という、株以上に難易度の高いものでアポイントを入れなければならない。

 

確か、支店に配属され3ヶ月程度だったと思う。

 

自慢では無いが、まだ僕は一人のお客様も作れていなかった。

 

「えっと、まだお客様いないんですけど…。」

 

「知ってるわ!!何回か訪問して話が出来てる新規のお客様にでもアポ入れろ!」

 

「ヒィ!」

 

逆らえるはずもない。
同期はもうお客様を作って取引している者もいる中で、僕は一人のお客様も出来ておらず、支店にとってお荷物以外の何物でもない。
せめて本部同行のアポぐらいは入れろ、と言われれば、ごもっともである。

 

(何回か顔出して仲良い(と勝手に思っている)小さな会社の社長のところに無理矢理行くか…)

 

そう思い、電話をかける。

 

「あ、お世話になってます!△△証券の僕です!」

 

「あ、あぁ、君もしつこいね。株とかするつもりないよー。」

 

「もちろんわかってます。ただ、今度の水曜日の13時って空いてますか?近く通るので、ちょっとだけ立ち寄らせて下さい!」

 

「え?そりゃ基本会社にいるけど…。」

 

「良かったです!それでは、今度の水曜日13時に上司とお伺いしまーす!」

 

「えっ?」

 

「水曜13時に(上司と)お伺いしまーす!失礼しまーす!ガチャ」

 

2回目の「上司と」はもはや発音していない。

 

こうしてなんとか無事アポイントは取れた。

 

移動手段の確認

 

本部同行当日。

 

本部の人間との同行は初めてだった。

 

自分一人の時はほぼ自転車で移動している。
が、アポを取ったお客様は、自転車で20分ぐらいのそこそこ遠い距離にいる。

 

さすがに本部のベテランの営業員を自転車で同行させるわけにはいかない気がするが、収益を1円も稼いでいない新人が社用車とか使っていいのだろうか?

 

歳が近い先輩に相談してみた。

 

「あぁ、それなら支店長車使えば?」

 

「…!?支店長車ですか??僕なんかが使っていいんですか…?」

 

「いや、本部の人が来るんだしいいだろ!むしろ自転車なんかで移動させる方が失礼だから!」

 

なるほど、本部の人が来たら支店長車での移動が基本らしい
まぁ本部の人は役職も高くて年配であることが多いし、それもそうか、と納得した。

 

「先輩!では支店長車をお借りします!今支店長は外出しているみたいですが、どのように借りればいいのですか?」

 

「あぁ、運転手さんに電話して、そのまま本部の人とアポに向かっていいよ。」

 

「え?支店長に許可とったり、自転車を借りる時みたいに“何時から何時まで使用、〇〇”みたいに時間と名前を入力する共有のエクセルファイルとか無いんですか??」

 

「うん、大丈夫、もうアポぎりぎりなんだし早く行きな。」

 

「あ、了解です!ありがとうございました!」

 

(そうか、本部の人が来たら支店長車が使われるのは周知の事実で、支店全員、言われなくてもわかってるんだ。)

 

何度も言うが、後になって冷静になると「なんでこんな解釈したんだよ!クソがぁっ!」って思える。
しかし、新人の時ほど問題に直面している最中に謎な解釈をしがちだ。

 

そうして、本部から来たおばさん営業員と二人、決まる確率0%の誰得なアポイントへ向かった。

 

消えた支店長車

 

アポイントに向かう最中、支店長車の中で僕の社用携帯が鳴った。

 

指導担当者からだった。

 

鍵の一件以来、指導担当者からの電話は完全にアレルギーだ。

 

「…も、もしもし。」

 

「おう、お疲れ。あのさ、今支店長が帰ってきて、これから出かけるのに支店長車使うらしいんだけど無いって騒いでるんだよね。まさかとは思うけど、お前勝手に使ったりしてないよね?」

 

「…。」

 

「…?もしもし?」

 

「…今、乗っています。(震え声)」

 

「えっ?」

 

「本部の○○次長と、支店長車でアポイントに向かっています…。(震え声)」

 

「…。」

 

「…。」

 

お互いに訳がわからず、しばしの静寂に包まれる。

 

「…ちょっと待って、それ、誰に許可とったの?」

 

おっしゃる通りだ。
この時ほど“おっしゃる通り!”という言葉がピッタリな場面ってそうそう無いだろう。
冷静に考えたら新人の僕でも余裕でわかる。
許可なく新人が支店長車を使って外交する異例さとキチガイさは。

 

完全に僕の頭はCHAOS MODE(カオスモード)に入っていた。

 

許可ってなんだ?
先輩には聞いたぞ?
いちいち許可取らずとも周知の事実ってことじゃないのか?
とはいえ「先輩に聞いた」とかいったら責任をなすりつけてるみたいに思われて余計怒られるのか?
てゆうかすぐ横にその先輩いるだろおい?
フォローしろや?

 

結局、ここはさすがに先輩の名前を出した。

 

「○○先輩に、支店長車で行けと言われたので使わせてもらってます…。」

 

「は?マジで?まぁいいわ、帰ったら話あるから。」

 

「…。」

 

そこからお客様のところへ行って、支店に戻るまでの記憶はほとんどない。

 

覚えているのは、いきなり本部の大層な肩書きの上司がやってきて、(いや、俺しつこい新人の飛び込み営業に付き合ってやってるだけで、口座すら持っていないしむしろ口座作る気も無いって…)という顔をしてドン引きしているお客様の顔だけだった。

 

地に落ちた評価

 

支店に戻ると、当然指導担当者に呼び出された。

 

「つーかさ、常識で考えて、支店長車を勝手に使えると思う?」

 

「思いません…!」

 

「じゃあなんで勝手に使ったの?」

 

「…。」

 

「本部の人が来るから、いいと思った?」

 

「…。」

 

「なんとかいえよ!!」

 

「ヒィ!も、申し訳ございませんでした!!」

 

このやりとりの間、ずっと疑問に思っていた事がある。

 

すぐ横でパソコンをカタカタいじりながら全くこっちに介入する素ぶりのない先輩だ。

 

無表情を通り越してまるで仏のようだ。
穏やかさすら感じられる。

 

(先輩…?あなたがうまく伝えといてくれるって言うから…?)

 

先輩「(カタカタカタカタ)」

 

(先輩?せんぱーい!!)

 

泣きそうな顔で送る俺の目線にようやく気付いた先輩が、こちらを向いた。

 

先輩「(笑)」

 

かっこわらじゃねーよ!!

 

角野卓造じゃねーよ!!ばりに心の中で突っ込んだ。

 

こちらを振り向き、(笑)みたいな表情をして終わりだった。

 

先輩も僕が支店長車を使うと伝えるのを忘れていたのか?
僕をハメようとしたのか?
ただのサイくそ(サイコパスくそ野郎)だったのか?

 

真相はいまだにわからない。

 

ただ1つわかることは、周りからの僕の評価が

 

“自席の鍵もろくにかけられず、支店長車を無断で使用して外交に行くイカれた新人”

 

というところまで堕ちたという事実だけだった。

 

教訓

社会人たるもの、優しそうな先輩の言うことでも基本的には疑ってかかれ。

ABOUTこの記事をかいた人

こんにちわ、シロです。 新卒で証券会社に入社→入社3年は全く数字ができず地獄の日々→「思考は現実化する」という本と出会い「俺はできる!」と思い続けていたら特進で出世し、年収1,200万円到達→休日しか楽しみが無く、死んだ魚の目をして一生を終えそうだったので退職→ブログと個人投資家(←今ここ) 会社員時代に、病気になったり突然倒れ帰らぬ人となった周りの人たちを見て「健康が一番大事やん…!」と悟りました。 自然が大好きです。 山登り、キャンプ、スノーボード、ダイビング、旅行が好きです。 主に雑記ですが、皆様が心身ともに健康でいられるような記事を書いていけたらと思っています。