仕事ができなくて萎えてる?
仕事でミスして落ち込んでいる?
そんな人に一言だけいいたい。
下には下がいるってことを。
これを見て、自分がまだマシだって思えたら、明日からまた仕事を頑張って欲しい。
なお、全て実話である
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目次
仕事の失敗談②机の鍵
支店配属
研修も無事(では無いが)終わり、都内の某支店に配属された。
研修の軍隊っぽい雰囲気とはまた違う、日々の数字を追っているなんとも言えぬ殺伐とした雰囲気だというのが第一印象だった。
「ここが君の席だから。そして隣に座る俺が君の指導担当者。よろしく。」
僕の席に案内され、指導担当者と挨拶を交わす。
バスケ部出身で体育会系だが、爽やかで筋が通った感じの人である。
僕の右隣に座るその人は、業務でわからないことのアドバイスなどをくれる僕専任の指導担当者だった。
(ここから、俺のエリートサラリーマン生活が始まるのか…)
なぜかドヤ顏でふけっている心の中の僕はまだ知らない。
自分がどれだけ運が悪いのかということを…。
新人あるあるのミスだった
新人は、基本ミスをする。
それは本人も周りの人間も周知の事実で、そのミスを二度と起きぬようにするのが“指導担当者”の役割だ。
裏を返せば、担当している新人がミスを連発すると、その指導担当者がさらに上の上司に詰められる。
これほど効率の良い支配構造は大組織ならではと言えるだろう。
ある日の朝、出社してすぐに指導担当者に言われた。
「昨日、自分の机にちゃんと鍵かけたか?」
「…!」
もちろん、目の前にある机の引き出しを確かめればわかることだ。
スッと開いてしまえばアウト、ガチっとホールドされていればセーフだ。
とは言え、セーフだったらこんな問いは無いのだろう。
「すみません、失念したかもしれません…」
「自分で確認してみろよ。」
「…。」
スッ…
当然アウトだった。
「も、申し訳ございません!!」
「いや、まぁ新人でお客さんもまだいないし、個人情報とか入ってないからいいけど、気をつけような。」
「はい!」
もっともである。
金融機関にとっての個人情報とは、最も流出させてはいけないものであり、流出させてしまったらその会社の信頼性を根本から崩してしまうほどのものである。
我々でいうところの個人PCのデータファイルや検索履歴ばりに流出させてはいけないものである。
僕は二度と同じ過ちを犯さないよう、机の上に“鍵!!”と書いた付箋を貼った。
「あ、そういうのはやめて。」
2秒後に剥がされた。
こういうのはダメらしい。
繰り返される過ち
確か1週間後ぐらいだったと思う。
朝出社したら、指導担当者が鬼の形相で座っていた。
「おい、お前、昨日ちゃんと鍵かけたかよ…?」
「え…!?」
まさか、である。
まさか、また…?
「か、かけた気はするんですけど…」
「かかってねーから言ってんだよ!!(スッ!スッ!!)」
指導担当者が僕の机の引き出しをこれでもかってぐらいスッスッして見せた。
「も、申し訳ございませんでした!!」
それなりに怒られたものの、まあ個人情報が流出したなどの大事ではないため、それで済んだ。
机の隅っこにこっそりと“鍵!!!!”と書いた付箋を貼ろうとしたがやはり2秒でバレて剥がされた。
駅のホームでの着信
「お先に失礼します!」
確か、それからさらに1週間ほどたった頃だったと思う。
僕はいつものように定時にあがり、帰路に着いた。
新人の頃の営業あるあるなのだが、会社にいる間中ずっとヒリついているため、帰りの電車の安堵感たるや、それは凄まじいものがある。
車を運転しながらずっと便意を我慢していた時に、ようやくコンビニを見つけギリギリ間に合ってトイレに入れた時のような感覚だ。
(ブーッ、ブーッ)
気の抜けた顔で電車を待っていると、指導担当者から僕の個人携帯に電話が入る。
野生動物が敵に見つかった時の気持ちってこんな感じなのだと思う。
全身の筋肉がピシっとこわばり、頭に100本ぐらいの針を刺されたような衝撃が走る。
「は、はい…」
「お前、ちゃんと鍵かけたか…?」
もはや「おっす!ちゃんと歯磨いたか?」ってぐらい何度も何度も繰り返し聞いてきた、逆に自然な日常会話な気さえしてくる。
「いや、今日は疲れたし面倒だから磨いてねーわ!」
とでも答えてやりたいぐらいだ。
当然そんなニュアンスで返せるわけもなく、もごもごする僕。
「とりあえず今すぐ戻ってこい。」
子鹿のようにダッシュして会社に戻る。
「てめぇ、いい加減にしろ!!!(スッ!スッ!!スッ!!!)」
「モウシワケゴザイマセン。」
「くぁwせdrftgyふじk!!!!!」
「モウシワケゴザイマセン。」
何も耳に入ってこず、無表情で謝った。
この時初めて気付いたけど、人って、というか生命って、身に降りかかる危機が一周回ると逆に大人しくなるみたいだ。
怒られている中でも、なぜかすごく冷静にそんな事を考えていた。
「何度言えばわかるんだ!?(スッ!スッ!!スッ!!!)」
「タイヘンモウシワケゴザイマセン。」
こんなやりとりを5回ぐらいしたところで解放された。
そして、ここでようやく、机に付箋を貼る事を許可してもらった。
“鍵!!!!!!!!!!!!!!”
と、ビックリマークで逆に読みにくい付箋を机に貼り、しっかりと鍵をかけ、その日は帰った。
先輩にも、上司にも、「今年の新人の中でもあいつは特にダメだな…」というレッテルが貼られたのはこの頃からだったと思う。
共に一周する
翌日。
定時退社して帰路についている最中に、またしても指導担当者から電話だ。
飲みの誘いか何かだろうか?と思い電話に出た。
指導担当者「お前、ちゃんと鍵かけたか?」
僕「ぶっ飛ばすぞてめぇ!!」
一瞬、パニックが一周回り逆ギレしそうになった。
当然そんなこと言えるはずもなく、もはや自分がどこの世界にいるのかわからなくなった。
かけた。
今回は100%鍵はかけた。
“鍵!!!!!!!!!!!!!!”
という付箋を見て、かけて、ガチッガチッってホールドされているのを2回確認してから出てきた。
「かけましたよ!!さすがに!!」
今回ばかりはちょっとキレ気味に返した。
とはいえ、むこうもアウトだから電話してきているのだろう。
「いや、かかってねーから電話してんだよ。もういいわ。おつかれ。」(ブチッ)
僕の危機感が一周したように、指導担当者の怒りもどうやら一周したようだ。
電話越しの声がやたらと穏やかになっている。
(ああ、人の感情は怒りでも恐怖でも、一周するとたどり着く先は同じなのかもな?もしかしてこれが真理の扉って呼ばれるやつか?)
とか考えながら聞いていた。
電話を切られてしまう前に、「とりあえず戻ります」「いや、いい、くるな」というやりとりを数回したのちガチャ切りされた。
なぜこんな事になっているのだろう?
本気で考えた。
- マスターキーを持っている総務課長が誰にも気づかれる事なく僕の机の鍵を毎日開けてくる
- 自分の脳の記憶を司る部分に異常がある
- 鍵穴に小さい虫か何かが住んでいて閉めてもすぐに開けてくる
- 異世界に召喚された
あらゆる可能性を考えたが、どう考えても非現実的な可能性しか思いつかない。
社会人たるものあらゆる可能性を考慮すべし
その日は腑に落ちないまま家に帰った。
翌朝冷静になると、怒りが一周回った上司が隣にいる会社に本気で行きたくなかった。
それでも、出社拒否の理由が“鍵のかけ忘れ”って、絶対に周りの上司や先輩が「ああwwまぁあのボンクラはこうなるのも時間の問題だったでしょww乙wwww」とか言ってきそうだったので意地で出社した。
「おはようございます。」
鍵は、絶対にかけた。
今回ばかりは間違いない。
ただ、それを証明する術はもちろんない。
僕にできることはなんだろう?ーそう、逆ギレだ。
こういった思考回路だったと思う。
キレられたらキレ返す。倍返s (ry
そう思っていたが、さすがに今回は指導担当者も何かおかしいといった面持ちだ。
「鍵はかけたのか?」
「かけました。」
「俺が確認したら、開いたぞ。」
「でもかけました。間違いありません。絶対です。」
「…」
「…」
お互い腑に落ちない顔だ。
「ちょっと鍵かけてみろ。」
言われた通りに鍵をかける。
(ガチッガチッ)
うむ、やはり、鍵をかけたら当然ガチッとロックされている。
「鍵は壊れてないよな?おかしいなー。かけ忘れじゃないのかほんとに?」
と言いながら指導担当者がロックを確認すると、
(スッ)
『「!!!」』
お互いに目を合わせ、冷静に今起こったことの確認作業に入る。
もう一度鍵をかけ、僕が確認する。
(ガチッガチッ)
指導担当者の上司が確認する。
(スッ)
どうやら、上図のように僕サイド(引き出しの左側)から力を加えたらガチッと固定されるのに、指導担当者の上司サイドから力を加えるとスッと開いてしまう、という世にも珍しい壊れ方をした鍵だったようだ。
いや、その可能性だれが想像できんねん!!!!!!!!!!!!!!!!
指導担当者は、なんとも言えない顔で僕を見ている。
憐れみとも、嘲笑とも言えぬ、なんとも言えぬ表情で。
いや、よーく思い出してみるとちょっとにやけていた。
世界で一番アンラッキーな新人を見るような目で、笑いをこらえるのに必死だった。
飛行機事故に遭う確率と、入社して配属された支店の自席の机の鍵が上記のような壊れ方をしている確率、いったいどっちの方が高いのだろう?
当然事務の人にソッコー机は変えてもらったが、この奇妙な壊れ方をした鍵の事実はほとんど知れ渡る事はなく、“鍵もろくにかけられない使えない新人”のレッテルだけが残った。
研修所での出来事といい配属支店でのこの出来事といい、たぶん僕の先祖は鍵に呪われるような事でもしたのだろう。
“鍵の神様”が祀られている神社とかがあれば一度お参りしたいと心から思っている。
教訓
「鍵は確かにかけたけど、自分の机の鍵は自分サイドからの確認ではガチッとホールドされるが逆サイドからの確認ではスッといとも簡単に開いてしまうかもしれない。」
というレベルの可能性まで探れるようになって初めて一人前の社会人。